半導体業界が始まってから50年以上、ムーアの法則が掲載されてから半世紀の歴史を見てみると、『技術』『産業』『市場』各方面で半導体の成長・発展には『規則性』があることがわかりました。
またムーアの法則に沿って発展してきましたが、ついにここ数年でムーアの法則の傾向に辿り着けていません。
どのようなことが、ムーアの法則に立ちはだかっているのでしょうか?
その法則と問題点について、これからご紹介していきます!
半導体産業の発展とは?
半導体業界の売上高の進捗
マイクロエレクトロニクスの設計、製造、パッケージ、材料と設備などの発展のおかげで半導体産業は急速に発展を遂げることが出来ました。
1999年〜2021年の世界での半導体の売上高はこのようになっています。
グラフから分かるように半導体市場の売上高は年々上昇しており、1999年から2019年までの年平均成長率(GAGR)は、5%以上に達しています。
半導体産業の成長率
半導体市場が示すもう一つの特徴は、成長率が規則的に変動しながら右肩上がりになっていることです。
3~5年ごとに『M』字を形成しながら成長していることがわかります。
半導体産業の成長率の変動の要因は複雑ですが、主な要因として市場の牽引と投資による技術革新が大きな影響を与えています。
半導体デバイスの発展とは?
半導体産業が成長していく要因として、最も大きな要因として半導体デバイスの進歩があります。
半導体の性能が向上していくにつれ、半導体を利用したものが世の中に溢れ、需要が高まります。
このデバイスの成長にも規則性があり『10年で世代が変化』しています。
新世代半導体プロセスが誕生するまで
新しい世代の半導体デバイスが生産されるまで、1世代10年間隔と上の表で紹介しましたが、研究開発から量産されるまでも10年という期間が必要であると言われています。
- 研究段階:5年
- 開発:2.5年
- 生産実験:2.5年
まず一番多くの時間を割く必要があるのは、研究の段階です。
新しい技術を取り入れ、実現可能なノードであるのかどうか、色々なシミュレーションを試行錯誤しながら、研究を進める必要があります。
開発や生産実験に関しては、研究データをもとに試行錯誤し、オプティマイズしていくことを指します。
ムーアの法則の終焉と新ムーアの法則!
ムーアの法則に沿って発展してきた半導体プロセスですが、2015年に遂に7nmノードにまで達成することが出来ました。
ここから先、さらにノードを微細化するためには物理的な制約を受けることになります。
そのノードを微細化するために受ける制約とは以下の通りです。
半導体プロセスの物理的制約
ノードを微細化するということは、半導体層を形成する各層を薄くし、パターン回路を微細化する必要があります。
その繊細なプロセスを形成するためには、そのプロセスに耐えれる材料が必要です。
例えば今まで使用されていたレジストや、絶縁膜に使用される材料膜の原子の分解能が、目標とするノード以下にならなければ目標のノードを達成することが出来ません。
ですので新しい材料の研究開発が行われており、簡単なことではありません。
レジストについて詳しくは、こちらを参考にしてください!
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消費電力の制約
デバイスの性能の向上とは、周波数と回路パターンの微細化に代表されます。
ノードの微細化に伴い、デバイスの周波数は世代ごとに20%向上していますが、電力密度も大幅に増えています。
もしも40W/cm^2の電力密度を保持しながらでは、周波数を向上することが出来ません。
また、14nmノード以降は周波数が低下するということも起きています。
半導体業界の経済的制約
90nmノードの100万個のゲートを擁する集積回路の生産コストは『0.0636ドル(9円)』、その後にノードが65nm、40nm、28nmに発展していくにつれてコストは低下しています。
しかし20nm代のノードに入ると、コストダウンしておらず、むしろ高くなってしまっています。
今後とも微細化ノードを生産していく傾向にありますが、コストとの戦いは続くことになりそうです。
今後の半導体業界の目標としては、以下の3つが大きな柱となっています。
- 高速
- 低消費電力
- 低コスト
このコストダウンにチャレンジするとなれば、消費電力と性能が大きな壁として立ちはだかります。
ムーアの法則は新時代へ変化!
More Moore(ムーアの法則の継続)
ムーアの法則が半導体業界の指標になってから半世紀経ち、徐々に法則とのギャップが目立つようになりました。
『More Moore』とは、引き続きムーアの法則に沿って半導体業界を発展させるように研究開発を進めていくということになります。
そのためには、集積回路に搭載するゲートやトランジスタの数を増やすために、微細なノードを追い求めていく必要があります。
ムーアの法則について詳しくは、こちらを参考にしてください!
More Than Moore(ムーアの法則を拡張)
異なる技術や用途の構造を搭載することで、ムーアの法則から外れはするが、新しい半導体デバイスの研究開発から量産まで、半導体の発展する道を広げることを目的としています。
例えば集積回路に以下のような機能を搭載することを指します。
- デジタル回路
- アナログ回路
- 無線部品
- パワー/高圧部品
- センサー部品
- MEMS/NEMS
Beyond Moore(ムーアの法則を超える)
ムーアという法則を超えることを指しており、『Beyond CMOS』とも呼ばれたりしています。
これはCMOS構造の半導体を超えるものは何かと考え、研究開発していき、今までのCMOSでは出来なかったことや、材料を変えることによってCMOS以上の性能を引き出そうという目的があります。
Much Moore(もっとムーアを活かす)
半導体には多くの学術が入り組んでいます。
例えば数学・物理・化学など様々ですが、その枠を超えて新たな次元の半導体チップ(集積回路)を目指すことです。
今までのチップに、生物学を取り入れたり、アルゴリズムを取り入れたりすることで、高度な技術の交差により、新しい発見があるかもしれません。
現在全く新しい取り組みとして、以下の研究と実験が行われています。
- EUVレーザー露光
- 計算リソグラフィー
- 多電子ビーム直写技術
- ナノインプリント
- システムレベルパッケージ(SiP)
- 3Dパッケージ
EUV露光について詳しくは、こちらを参考にしてください!